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第50回「米国不動産キャンセル率上昇」の真実

キャンセル率14.9%!?

テレビ東京番組のNewsモーニングサテライトにて「契約キャンセルが急増 米住宅市場低迷」との報道がありました。

「アメリカの6月の住宅購入購入契約のうち、14.9%、およそ6万件が解約されたことが不動産仲介のレッドフィンによる調査で分かりました。これは、新型コロナがアメリカで本格的に拡大し始めた2020年4月以来の高水準です。レッドフィンは解約が増えたことについて住宅ローン金利が高すぎて手が届かなくなったことなどを理由としています。」

2022年7月12日

⇒上記を受け、どのような市場と見ればよいのか考察します。

ニュースソース元 Redfin(レッドフィン)の発表情報

記事URL:https://www.redfin.com/news/home-purchases-fall-through-2022/

<ポイント>


・従来12-13%ほどのキャンセル率が、14.9%に上昇。(ゼロから急に上昇したわけではない

・住宅ローン金利の上昇によるキャンセルも当然あるが、マーケットが落ち着きつつあり、インスペクション等を経てキャンセルするケースが戻ってきている

ダラスは19.9%で全国平均よりも高め。ただし、「キャンセル率が高い=不健全な市場」とは言いづらい

 

<Redfin記事の主な内容>


・全国で約6万件キャンセルがあり、その月に契約した住宅の14.9%に相当します。これは、コロナで住宅市場がほぼ停止した2020年3月と4月を除いて、2017年以降最高の割合です。1か月前の12.7%、1年前の11.2%と比較しても上昇しています。

注釈:2017年までさかのぼったMLSデータのRedfinの分析によるものです。なお、ある月に契約キャンセルした住宅が、必ずしも同月に契約されたものとは限りません。例えば、6月に契約キャンセルとなった住宅が5月に契約された可能性もあります。

・Redfinの副チーフエコノミストであるTaylor Marr氏は、「住宅市場の競争の鈍化は、バイヤーに交渉の余地を与えている、これが契約キャンセルが増えている理由の1つです」「買い手は、インスペクションやアプレイザルの条件を放棄せず、むしろ維持する傾向が強まっています。これにより、住宅購入の過程で問題が発生した場合、取引を中止する柔軟性を持たせているのです。」と述べています。

最近の過熱したマーケットではオプション期間なしでオファーしたり、インスペクションで不具合を見つけてもそのまま購入するケースがありました。しかし、競争が鈍化傾向にあることで、何かネガティブ要素があればキャンセルするバイヤーが増えています。つまり一時的に特異な状態であったのが、本来の商習慣に戻ってきたと言えるでしょう。

・Taylor Marr氏は「住宅ローン金利の上昇も、一部のバイヤーに住宅購入の中止を迫っています。オファーを出した時には5%だった金利が、取引が成立する頃には5.8%に達していた場合、その住宅を購入する余裕がなくなったり、融資を受ける資格がなくなったりする可能性があります。」とも述べています。

 

<エリアごとのキャンセル率> *1,000件以上の取引のあるエリアのみ対象


ダラスは19.9%で全国平均よりも高め。フォート・ワースは18.9%

・Phenix, AZ(9位、24.5%)、やAtlanta, GA(17位、22.0%)等、住宅市場が好調とされるエリアも高水準。
一方、San Francisco, CA(99位、5.5%)、New York, NY(94位、6.8%)等、価格が高く投機的な売買も多いとされるエリアは低水準であり、「キャンセル率が高い=不健全な市場」とは言いづらい

一般的な指標でマーケットの状況を再確認

*Redfinデータを使用

DOM(成約日数)も最低レベル維持しており、まだ市場低迷の状況とは言えない数値が示されています。

一方、成約件数は減少しています。値引き販売する物件の割合は増加している点も要注意です。今後は価格上昇が落ち着く可能性があるとも言えます。

販売価格(価格中央値)

<ダラス> ― 高水準維持

・常に前年超の価格で推移

・前年比120%を継続

<全国> ― 高水準維持

・同様に常に前年超の価格

・前年比は、115%前後で横ばいから、下落傾向

DOM(Day on Market)の中央値 ※低いほどマーケットが好調

<ダラス> ― 好調

・最低水準の17-18日付近を推移している。

・前年差はゼロに近づく。これ以上下がらない水準。

<全国> ― 好調

・ダラスと同様に最低水準で推移している。

成約件数

<ダラス> ― 落ち込み気味

・直近は前年を下回る件数で推移。

・2021年7月以降は、前年比マイナスの月が多くを占める。

<全国> ― 落ち込み気味

・昨年8月以降は、前年と同等もしくは少し下回る水準で推移。

値引き販売する物件の割合

※低い:「値引きせずとも売れる」、高い:「売値が高すぎ」「値引きしないと売れない」

<ダラス> ― 値引きが増加

・6月7月で急に増加し、直近は8%程度。

・初期の売出価格より高く売れるケースが減少?
・価格上昇局面だったため、高く値付けしすぎた物件が価格を見直し?

⇒仕入れには有利な可能性あり

<全国> ― 値引きが増加

・傾向は同様だが、ダラスの方が割引の件数は多い傾向

以上の通り、キャンセル率の上昇が直接的に市場の冷え込みを表しているとは言えません。一方で、強気の価格設定をした物件が価格の見直しを余儀なくされるケースが散見されることを鑑みると、非常に加熱していた市場も落ち着きを取り戻してきた印象です。

今後も変動の大きい市場が予想されます!その中でも良いエリア、悪いエリアがあります。アメリカ不動産にご興味のある方は是非ともご連絡をお待ちしております。

テキサス不動産事業 CEO / Architect 鶴岡洋一

大手ハウスメーカーの技術者として、東南アジアでの戸建分譲地開発に従事。加えて、マーケティング、経営企画、人事も経験するなど、幅広い専門知識を持つ。2018年からテキサス不動産事業に参加し、現地の代表及び技術責任者を務める。
日本の一級建築士、宅地建物取引士。

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